永遠の門 ゴッホの見た未来
永遠の門 ゴッホの見た未来
生まれてくるのが早すぎた。
ゴッホが評価されなかった時代の人々のリアクションが面白い
STORY
「潜水服は蝶の夢を見る」「夜になるまえに」のジュリアン・シュナーベル監督が画家フィンセント・ファン・ゴッホを描き、2018年・第75回ベネチア国際映画祭コンペティション部門で、ゴッホ役を演じた主演ウィレム・デフォーが男優賞を受賞した伝記ドラマ。画家としてパリで全く評価されないゴッホは、出会ったばかりの画家ゴーギャンの助言に従い南仏のアルルにやってくるが、地元の人々との間にはトラブルが生じるなど孤独な日々が続く。やがて弟テオの手引きもあり、待ち望んでいたゴーギャンがアルルを訪れ、ゴッホはゴーギャンと共同生活をしながら創作活動にのめりこんでいく。しかし、その日々も長くは続かず……。作品が世に理解されずとも筆を握り続けた不器用な生き方を通して、多くの名画を残した天才画家が人生に何を見つめていたのかを描き出していく。ゴッホ役のデフォーのほか、ゴーギャンをオスカー・アイザック、生涯の理解者でもあった弟テオをルパート・フレンドが演じるほか、マッツ・ミケルセン、マチュー・アマルリックら豪華キャストが共演。
感想
ゴッホをテーマにした映画はたくさんあるけれど、これはドキュメンタリーではなく劇映画。自身も画家でもあるジュリアン・シュナーベル監督の解釈で切り取ったゴッホの人生の一部。1888年。パリに疲れてアルルへ向かったところからの物語だった。
タイトルに「生涯」と書いているけれど、生まれてから死ぬまでというわけではなかった。鑑賞に問題はそれほどないだろうけれど、ざっと生まれてからのことを説明すると、オランダ生まれで、弟がいて、伝道師になった後、27歳で画家になることを決意。それから弟に仕送りしてもらいながら画家活動していた。という感じだ。
彼の生涯には、辛い挫折経験が多い。神学部入学を諦めたり、失恋で勤務態度が悪くて会社を解雇されたり、画家になった後も美術学校では教師と揉めた。そういった辛い過去と対照的に彼の描く作品からは喜びや生命力に満ちた明るさが感じられる。作品が陽だとしたら、彼自身は陰なのだと思う。
映画はゴッホのPOVのような始まりを見せるが、所々にそういった演出があるけれど、これが効果的とは感じられなかった。彼の人生の面白さというよりも、この作品は彼の周りを生きていた人々の方がより魅力的に映る。それは、彼を支えた弟やゴーギャン、ジヌー夫人もそうだし、彼をアブナイ人間のように扱った人たちもそう。
面白かったのは、自分には絵の才能があると疑わない彼と、彼の描いた絵を見て、「これを才能と感じているなんて、なんと気の毒なことだろう」といった目でみつめるカウンセラーとのシーン。コミュニケーション取れてないやり取りが面白い。画面からは、「ああ、ゴッホはこういう風なイメージがあって、それを伝えたいんだな」と汲み取れるけど、当人たちは「は?」ってことの連続だったんだろうな。
周りの人間とすれ違ってばかりだったけれど、描き続けた多数の作品を見ると、「自分の思う美しさのために意思を貫き通した」というイメージが先行するけれど、彼は貫いたよりも、そうする以外他なかったという感じだと思う。人と話してるときも、独り言でも言ってるみたいに会話するデフォーのユニークな演技からもそう感じられた。本年度アカデミー主演男優賞ノミネートだけあるなと思った。
フライヤー