『道をひらく』

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書名:道をひらく ( 英題: The Path  )

著者:松下幸之助

発行者:佐藤悌二郎

発行所:株式会社PHP研究所

1968年5月1日発行

 

 

 

2018年3月17日(土)が私の大学の卒業式だった。

その前日に、四国の実家から前乗りしていた母から、吉祥寺のホテルでもらったのが「道をひらく」である。チェックインまでの時間、伊勢丹に行くことにした。その途中2人で新宿の紀伊国屋書店前をとおりかかったとき、売れ筋コーナーにあったこの本を見つけてしまったらしく、「売れ筋」というものをプレゼントすることに少しショックを受けていた。

 

母が私にくれたのはリバーシブルカバー装丁で、表はいわゆる「おしゃれ」としての、パターンが描かれていて、裏は従来のトリコロールカラーの装丁だった。(固苦しさはあるが、飾り気がなくて私は好感をもった。)松下幸之助氏の随想集ということもあり、堅苦しさは感じられなかった。童話屋の装丁に似た印象もあり、詩集を読んでいる感覚にもさられる。

 

1968年5月1日初版のこの本は、この世に生まれて50年ほど。これを書いた松下幸之助氏は1894年生まれ。おそらく74歳の頃にお書きになったはずだ。それを2018年春に私は初めて手に取った。それだけで長い時間の存在を思い知ると同時に、22歳というあまりに小さい私の時間の存在に気づく。 

 

これで卒業式というイベントは、おそらく私の人生でこれで最後であると思う。 

毎度のように、えらい人の話は長く、式の会場のこもった空間に少しにぶったマイクの音が響く。外に出たら、談笑もほどほどに、みな写真をとることにあくせくしていた。卒業式というイベントを終えてみて、私のこれまでは道がつづいているというよりは、似たような形式環境をリピートしている感覚である。私は就職というものをしないけど、おそらく就職する人はこのリピートを感じるんだろう。人が集まるということは、こういうことなのかもしれない。個人で自分自身をみる目をもったとき、はじめて「道」ができるのだろう。